ブコウスキー大スキー

昔、チャールズ・ブコウスキーの本を読んでいて、先生に怒られたことがあります。

「若者が読む本ではないよ。トルストイユゴーを読んだほうがよい。」

トルストイは私の好きな文豪のひとり、もちろんユゴーも好き。

でも、ブコウスキーも好き。




確かに、ブコウスキーは相当なデンジャラスおじいさんで、表現は真っ直ぐ……ぶっちゃけて言えば、翻訳家さんも頭が痛かっただろうな…と思う下品表現もあります。

だから、倫理の先生にとってみれば、悪影響だと言うことだったのでしょう。

大学に入ってからゼミ友にブコウスキーの話をしたら、

「女でブコウスキー読んだりっていう女…俺としちゃ歯のないイメージだよ」と言われました。

私どんなイメージやの!と思いましたが(見た目は読んでいるイメージがないらしいです)、それくらいのパンチ力のある作家さんということです。


私が読む本は色々あり、数々の名作を生み出したヘッセも好きだし、カフカも好きだし…詩人さんも好きだし。

そして野郎漫画も好きなんですよね…バキとかタフとか北斗の拳とか。

で、「バキ読むよ」ってカミングアウトすると女子よりも男子に引かれ(その前に女の子バキわからないから…)、最終的に心配されます。

バキ―New grappler Baki (No.1) (少年チャンピオン・コミックス)

バキ―New grappler Baki (No.1) (少年チャンピオン・コミックス)

男子から「恋愛カタログ」を紹介されたこともありました。

恋愛カタログ 1 (マーガレットコミックス)

恋愛カタログ 1 (マーガレットコミックス)

い、いや、少女マンガも普通に読むんですよ!紹介されたときは恋カタ(←これって死語ですか?)途中まで既読でしたよ!

マーガレット派だったよ!花とゆめも!(なんか言い訳みたい…)




さて、ブコウスキーの話に戻りますが…

ブコウスキーは未読の人には、まあ、読んでも後悔はしないでね☆と明るく言うしかない本です。


町でいちばんの美女 (新潮文庫)

町でいちばんの美女 (新潮文庫)

死をポケットに入れて (河出文庫)

死をポケットに入れて (河出文庫)

詩人と女たち (河出文庫)

詩人と女たち (河出文庫)

勝手に生きろ! (河出文庫)

勝手に生きろ! (河出文庫)



よく見ると、中川さん訳が好きらしいワタシ。でも、青野さんも、都甲さん訳も好きなので載せてみます。

実際私が読んでいたのは、90年代に出た本だったのですが、今は新しく読みやすくなったみたいです。

はじめての方は、「詩人と女たち」から見るといいかもしれません。

「しゃぶりつくせ!」と言う題名の本は買うことができませんでした(だってその題名!!レジに持っていく勇気が!!!!!)




さて、私がブコウスキーを読みたいと思ったのは、年齢問わずブコウスキー大スキーな人が世界中で多いからです。

この作家が人を虜にする理由が知りたくて手に取りました。




本一冊一冊の内容を説明すると長くなるし、載せられない言語が多すぎるのでざくっと。


ブコウスキーと言う人は、ありえないくらいの体たらくで男の本能まる出し。

でも、茶目っ気たっぷりのこまったおじいちゃん。

傍にいるとぜったい迷惑、大変な人がいたもんだ、と読み手にこれでもかと伝えてくる人です。

自分のことをそういう風にあらわしているのですが、自虐的ではなくどこか他人行儀で客観視しながら、自分を書いているのです。

それが面白い。

面白いけれども、確かに大人でも赤面してしまうような内容で、倫理には引っかかる内容だと思います(オイオイ…)。



倫理には引っかかる、でも、読めば読むほど引き込まれる本能むき出しで書きなぐったような文書、そこからこぼれる絶望と希望。

人間ってこんなに単純で緻密っていうことに、わたしは救われたりも、うんざりしたりもして。

そして、あまりに体たらくな生活に笑って、でもこういう風になった背景を思って悲しくなって。

凄くいろんなことに迷っていたとき、参考書とまではいかないけどこの本を読んで

「お前の悩みなんて鼻く●以下じゃ!」

と言われたような気がしてざっくりと魂を注ぎ込まれたような気もしました。




ブコウスキーもケルアックもバロウズもそうだけど、凄く恐ろしい方々なのに、生きていることに遊んでないように感じて。

遊びのような生き方に見えるけど、実際は人間の一番弱い部分とか、醜い部分とかを剥きだしにして、でも生きるんだ!っていうことを、全身全霊で訴えていて…なんていうか本能の露出狂みたいな。

服を脱ぐとかそういった簡単なものじゃなくて、皮膚を剥ぎ取るくらいの露出を文で行ってしまっているように思います。

子供が泣いて訴えるのは甘えも入るけど、大人の本気の訴えは甘えではなく、もう咆哮に近くって恐ろしいものがあります。

路上 (河出文庫 505A)

路上 (河出文庫 505A)

裸のランチ (河出文庫)

裸のランチ (河出文庫)

人間の核心部分をこれでもかって突いてくるから、読むとがっくりする人もたくさんいると思うし、わたしこんな人間じゃない!って思う人もたくさんいると思うのです。

受け止め方は色々あっていいと思います。

私の場合、本にとどまらず曲などの作品でも、核心部分だけこれでもかと晒されると読んだり聴いたりするだけでげんなりするし、疲労感に襲われます。

誰だって自分の一番醜く汚いところは見たくないし、突っ込まれたくないところだと思うので。

でも、わたしはこれらの方々の本を読んで自分が目を背けたがっていた自分の愚かさっていうか内面のグニャッとしたもの(なんだそりゃ…)に気がついたし、だからこそ生きなきゃいけないんだなとも思いました。

最終的には、心はすっきりするんです。

これらの著者は、さらけだすだけさらけだしているばかりのようでいて、必ずといっていいほど読む方が当然のごとく浄化されていく表現の力を持っていて、そういった芸の施しがなされているような気がします。

こういう人になりたくないっていうただの反面教師とは受け取れないんですよね。

だから私にとっては学べるし、人の勉強ができる人間哲学と捉えています。



先生は若者は読んじゃいけないって言ってましたが、でも、いまだに残っているということはかつて若者だった大人たちが名作だと思って残してきたという事実ってことなんじゃないかな?

なんて思っちゃったり。




今まで名作といわれる本は読んできたつもりです(つもりですから、つもりで終わってることも多々)。

でも先生の言ういいことばかりじゃない本も読んできました。そっち系の本じゃなくてですよ(なに系やろ…)。

大人に反抗したいではないけど、それは大人が感じるいいであって、子供が感じるいいとはまた別のものなんじゃないかって思って、メンドクサイがきんちょの私は色んな本を読んでました。


でも、その当時の先生が言ういいとする本ばかり読んで、大人になって「いざ自分で」となったときにブコウスキーと出会ったら、また違う意味での感動があったのかもしれません。



久しぶりにブコウスキーが書棚から出てきたので、読んだら、やっぱりはっちゃけてる爺さんでした。

でも、会えてよかった文豪の一人には入るなあと思ったのでした。

ぜんぜんキンキさんに関係ないと胸を張って言えるような内容なのでした。

そしていつも私事にも色々コメントやお星様などありがとうございます。

まる。